単身赴任と食事 理論

まず、何と言っても日々の食事が大切です。前作より改善したのは特に夕食です。以前は前作でも記しましたが、スーパー等の総菜刺身を半額になる時間帯まで待ち、購入して、夕食とし、節約しておりました。

この様な期間が長く続きました。そんな中、知り合いの年配者の方々で、家庭菜園をしている人は、みな健康で長生きしている事が多いことに気が付きました。

そこで、目にとまり出会った本が、東京医科歯科大学名誉教授の藤田拡一郎先生の本です。先生の本は興味深く何冊も読破しました。腸内細菌が人間の健康を左右しているとの説です。

この説について順を追って説明していきます。人間の細胞は約60兆個あり、個々の身体を構成していると言われています。

一方、腸内細菌は1000兆個も存在し、腸内フローラ、腸内でお花畑の様に分布して、実に免疫物質の7割、同じくやる気物質の7割を人体に供給しているとの説です。

人間の細胞より多くの細菌が腸内に共生し、太古より人間とともに生きてきたという説です。この学説は近年の遺伝子解析、医学の進歩により、まず間違いない学説となりつつあります。

つまり、人間の腸には人間の細胞数以上の多様な細菌が常に住み着き、人間が生きるのに必要な物質を産生し提供し続けているということです。

腸に人間を支える別世界、アナザーワールドが存在しているという驚きの真実です。それを本能的に昔の人は知っていたのか、大便の便は、お便りの意味を持ちますし、お通じ、も電話が通じる等の連絡の意味を持ちます。すなわち、大便は重要なアナザワールドの状態を伝える大切なメッセージととらえる事ができます。

また、その腸内細菌は2万種類以上も存在し、ビフィズス菌等の善玉菌2割、日和見菌7割、大腸菌等の悪玉菌1割の割合で存在していると言われています。

このバランスを保つことが大切と言われています。悪玉菌も人間の免疫を刺激し高めるうえで必要悪と言えます。そして、バランスを維持するために、善玉菌を増やすため、ヨーグルト、みそ等の発酵食品をとるのが効果的と言われています。

たとえ、善玉菌が生きたまま腸に届かなくても、その成分は腸内に存在している善玉菌を増やす成分が含まれています。日和見菌は善玉菌が増えれば悪事は働かないので健康を維持できます。逆に悪玉菌が増えれば悪事に加担するようになり、健康を害するので注意が必要です。

そして、この腸内細菌の栄養源となるのが、食物繊維なのです。人間の体は食物繊維を分解しエネルギーにすることはできませんが、腸内細菌はそれが可能なのです。

実際、たんぱく質、炭水化物等胃で消化されたものは、小腸でほとんど吸収されるため、腸内細菌が住んでいる大腸には食物繊維位しか栄養源として到達することができません。この様に腸内細菌をバランスよく健康に保つためには、食物繊維摂取がとても大切です。

藤田先生の本によると、免疫物質の約7割を腸内細菌が生成しているとの事です。なので、食物繊維を適正に多く摂取していると風邪等もひきにくくなり、また、がんのリスクも下げる可能性があるとの事です。

なぜ、がんのリスクをさげるかと思うかもしれませんが、人間は1日に数千個がん細胞を生成してしまっていることが知られています。

これを免疫細胞が増殖しないように処理しているのですが、加齢とともに免疫が低下すると、その生成を抑えきれず、がん細胞が増殖し人体をむしばんでいきます。

なので、がんは一般的に高齢者に多い疾病と言うのもうなずけます。藤田先生の本にはご高齢の有名冒険家を引き合いに出し、遺伝子的にはがん発症リスクの高い遺伝子をお持ちの方が、腸内細菌叢が素晴らしく、今でもご高齢ですが元気に登山にチャレンジしていることが記されています。

食物繊維を積極的に摂取して、腸内細菌の活動を高め、免疫を高めるのは、健康、長寿にとても良いことが理解いただけると思います。

また、セロトニン等やる気物質の生成に、これも約7割、腸内細菌が関与している可能性があります。セロトニンは消化管に人体全体の90%が存在し、脳内にはたった2%しか存在しません。

この脳内のセロトニンを腸内より供給するために腸内細菌が働いているとの事です。そのため、腸内細菌の活動が衰えると、脳内セロトニンの減少が原因の一つと言われている、うつ病になるリスクが高まる可能性があります。

私も以前MR(医薬情報担当者)で抗うつ薬SSRIを販売した経験があります。脳内でセロトニンの再取り込みを阻害し、脳内のセロトニン濃度を高め、うつ病を改善する作用機序の薬です。

しかし、今から思えば、腸内細菌によるセロトニンの脳内への供給が根本的な治療につながると思われ、薬物治療と同時に食事内容の改善指導も重要ではないかと思います。

藤田先生の本にも興味深いデーターがあり、大便の重さと自殺の相関を国別に見た場合、明らかに負の相関が、認められ、立派な大便をしている国のほうが、自殺率は低かったとの事です。

その相関で一番自殺率が低かったのはメキシコだそうです。ちなみに自殺者数とうつ病は強く相関していますし、大便の半分くらいは腸内細菌の亡骸だそうです。

私が思うには、近年、日本で自殺者が毎年2万人を超えているのは、コンビニ等で食事を済ますケースが多く、食物繊維摂取が減少し、腸内細菌が衰え、セロトニンの産生が減少した事による可能性があると思うのですが、いかがでしょうか。

食物繊維を意図的に摂取し、腸内細菌を活発にし、セロトニン生成を増加させれば、メキシコ人の様に陽気に生きられると思います。前述した家庭菜園をされている年配の知り合いの方が、みな健康で長寿なのは畑で出来る野菜を多くとり、免疫、やる気を高めいきいきと生活しているためと思います。

また、面白いのは腸内細菌叢は一人一人指紋の様に個人によって違うということです。その人特有の細菌叢をもっているということです。

この形成に影響を与えるのが、最初は母親の産道を通るときに、母親の腸内細菌が赤ちゃんについてくる可能性があるとの事です。

続いて、お母さんと一緒に生活することによる、母乳等による皮膚への接触、また、同じ食事内容による腸内細菌の形成が考えられます。

特に、発酵食品、みそ、しょうゆ、ヨーグルト、キムチ等はその形成に影響を与える可能性が高いと言えます。

つまり、小さい頃より共同生活していると、同じ様な細菌叢になっていく可能性が高いということです。昔より生みの親より育ての親と言いますが、60兆個の人間の細胞より、1000兆個の腸内細菌叢が似ているほうが、個数的にも、また、先述した産生される各種細菌生成物質においても、その子供の個性に与える影響は大きい事を、昔の人は直感的に理解していたのかもしれませんね。

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